春の淡雪 [鬼平]
春の淡雪〔はるのあわゆき〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和五十六年十月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(二十一)』
TV 第ニシーズン45話『春の淡雪』(91年3月13日放送)
脚本:野上龍雄
監督:杉村六郎
〔本のおはなし〕
風も絶えた、春の夕空に雁がわたっている
そのとき・・・・・・
火付盗賊改方の長谷川平蔵へ、二人の浪人者が斬ってかかった
例によって、着ながしに塗笠をかぶった、市中見廻り姿の平蔵へ、
背丈の高い浪人が、息もつかせずに斬り捲(まく)ってきた
必殺の一刀を打ち込んできた浪人者の左側へ飛びぬけさま、近江守助直二尺四寸余の一刀、抜く手も見せずに浪人へ浴びせかけた
あわてて振り向いた無頼浪人の左耳が平蔵の一刀に切り飛ばされ、左肩からも血が迸(ほとばし)った
のめり込むように倒れかかる浪人へ見向きもせず、塗笠をかぶったままの平蔵が、血相を変えて迫る、もう一人の浪人の左側へ颯(さっ)と身を移し、
「酔いどれめ、おれが斬れるか」
と、いった
飛びちがって、双方がぱっと向き直った瞬間に、平蔵は相手の刀を無造作に打ちはらった
打ちはらわれた浪人の刀は手をはなれ、横ざまに飛んで落ちた
浪人は愕然となり、刀を拾って飯倉の通りへ一散に逃げた
平蔵に耳を切り落とされた浪人も、這うようにして、石段下北側の木立の中へ逃げ込もうとしている
夕暮れのことで、八幡宮の門前にいた人びとは十名に足らなかったが、期せずして、よろこびの声をあげた
二人の無頼浪人は、門前の茶屋へ入り、したたか酒をのんでおいて、
「この酒は、水で薄めてある。けしからん」
難癖をつけ、茶屋の老爺を撲りつけたり、蹴倒したりした
そこへ、西の久保八幡宮の参詣を終えた長谷川平蔵が通りかかり、浪人どもを懲らしめたのだ
刀身をぬぐって鞘へおさめた平蔵が件の茶屋へ入り、老爺をいたわり、
「酒をたのむ」
塗笠をとって腰掛けへかけた平蔵へ、
「長谷川様。とっくりと、拝見させていただきましてございます」
声をかけ、茶店へ入って来たのは、この近くの扇屋・平野屋源助方の番頭で、名を茂兵衛といい、年齢(とし)のころは四十をこえていよう
「実は長谷川様。これから御役宅へ参じるつもりでおりました」
平蔵の側へ身を寄せた茂兵衛が、
「悪い男(の)をひとり、見つけましてございます」
茂兵衛が耳もとでささやくにつれ、長谷川平蔵の顔色が引きしまってきた
夕闇が濃い
八幡宮参詣の、人の足も絶えた
何処かで、猫が鳴いている
茂兵衛は昼前に、商用で増上寺の子院・威徳院へおもむき、用事をすませてから、愛宕山権現社へ参詣しようとおもい、増上寺の裏門から外へ出ようとして、
(あっ・・・・・・)
素早く、裏門の陰へ身を引いた
愛宕下の方からやって来る、四十前後の二人連れの男に、見おぼえがあった
二人とも、茂兵衛が顔を見知っている盗賊で、
「ひとりは雪崩(なだれ)の清松、もうひとりは、日野の銀太郎と申しまして・・・・・・」
と、茂兵衛は長谷川平蔵に告げた
「二人とも、名前が長谷川様のお耳へ達しておりますでござりましょうか?」
「いいや、知らぬ」
さりげなくこたえておいたが、実は平蔵、雪崩の清松の名前と顔におぼえがあった
盗賊改方に、大島勇五郎という同心がいる
雪崩の清松は、大島同心が使っている密偵であった
同じ密偵でも、下ばたらきの清松は長谷川平蔵直属のそれではない
それから一刻ほど後に、長谷川平蔵は町駕籠で清水門外の役宅へ帰って来た
「明朝、五郎蔵とおまさを役宅へよんでもらいたい。それから、大島勇五郎に、わしの用事をたのむゆえ、外へ出るのを待つようにいいつけておくように」
平蔵は、当番与力の遠山猪三郎へいいつけておいて、早めに寝間へ入ったようだ
翌朝、ゆっくりと目ざめた長谷川平蔵が、待機していた同心の大島勇五郎を居間へよびよせたのは四ツ(午前十時)ごろであった
「大島。この手紙を、二本榎の細井彦右衛門殿へ届けてもらいたい。返事はいらぬ」
長官と細井彦右衛門との交誼については、大島もかねてからわきまえている
「では、これより行ってまいります」
「あ、待て」
立てかけた片膝を直し、やや、頚(くび)をかしげるようにして平蔵を見た大島勇五郎の顔や姿が、いかにも優しげである
「いま、おもいだしたが・・・・・」
と、長谷川平蔵が、亡父遺愛の銀煙管を手に取って、
「ほれ、お前が使っていた下ばたらきの、清松とか申した・・・・・・」
「このところ三月ほど、会うてはおりませぬ」
大島同心が出て行ったあと、平蔵は煙草のけむりを吐きつつ、開け放った障子の向こうの庭へ目をやった
薄曇りの空から、時折、日ざしが洩れてきて、朝から春のさかりがきたように生暖い
大島勇五郎は、下ばたらきの密偵・雪崩の清松と、三ヶ月も会っていないそうな
となれば、むろんのことに昨日も会ってはいないわけだ
平野屋の番頭・茂兵衛によると、昨日の清松は、盗賊・日野の銀太郎と共に、千束池のほとりの茅ぶきの小さな家へ入って行ったという。そのことを大島同心は知っていないことになる
知っていれば平蔵へ告げるであろう。いや、告げなくてはならぬ
ところで・・・・・・
長谷川平蔵は、今朝起きぬけに、暗いうちから役宅へ来て、妻の久栄の部屋に待機していた密偵・大滝の五郎蔵とおまさを密かにまねき、昨夜に茂兵衛から聞き取ったことをすべて打ちあけ、
「五郎蔵は、その千束池の様子を探ってもらいたい。おまさは、大島勇五郎の後を尾けてもらおう。今日、わしは大島を細井屋敷に使いに出すゆえ、そのつもりで」
「顔を見知っている間柄ゆえ、尾行はむずかしいが、大丈夫かえ?」
「大丈夫でございます」
きっぱりと、おまさはこたえた
「五郎蔵。さしたることはないとおもうが、平野屋源助が日野の銀太郎を、畜生ばたらきの好きそうな男と見きわめたのが気にかかる」
「まったくで・・・・・・」
と、五郎蔵の顔が引きしまった
同心・大島勇五郎が役宅を出てから半刻ほどして、平蔵も例の密行姿で、単身、役宅を出た
そのころ・・・・・
大島勇五郎は、数寄屋橋御門外の濠端を歩んでいた
いつもの大島に似ず、歩みぶりが鈍い
先刻、長官の前に出たときの大島とは別人のように、むずかしい顔つきになっていた
大島の左手が、笠の内へ入っている
左手の親指の爪を、いらいらしながら噛んでいるのだ
大島勇五郎を尾行しているはずの、おまさの姿は何処にも見えなかった。。。
〔主な登場人物〕
長谷川平蔵(中村吉右衛門)
大島勇五郎(中村浩太郎)
池田屋五平(中村又五郎)
雪崩の清松(平泉成)
おまさ(梶芽衣子)
大滝の五郎蔵(綿引勝彦)
平瀬の又吉(森下哲夫)
日野の銀太郎(椎谷建治)
〔盗賊〕
・平瀬の音吉:池田屋の番頭。一人ばたらきの盗賊で、引き込みを得意とする
・鷹ノ巣の新十郎:血なまぐさい急ぎばたらきをする兇盗。雪崩の清松と日野の銀太郎が池田屋の押し込み計画を売り込んだ
〔商家〕
・加賀屋:神谷町の蕎麦屋。平蔵が二階の小座敷に茂兵衛を連れて行き、雪崩の清松の話を聞く
・池田屋:神楽坂の毘沙門横町にある薬種屋。主・池田屋五平の盗人宿
・江戸清:市ヶ谷田町の料理屋。店構えも大きく、料理もうまい。大島勇五郎と雪崩の清松が池田屋五平一味と、五平のむすめ・おうめの身代金の交渉を行った
・小西屋彦太郎方:麹町三丁目の薬問屋。池田屋五平が十年ぶりの江戸の盗めを画策していた
〔料理帳・本〕
〔料理帳・ドラマ〕
饂飩、平蔵他、見張り所にて
なめろう、猫殿の準備中、役宅にて
見よ、この肌つやといい、身の締まり、見事なこと、これならできる
たかが鰯とはなんだ、たかがとは、この猫様がなめろうを作ろうというのだぞ
いいか、そもそもなめろうとはな、牛込にある小坂という小料理屋の親爺の直伝の料理で、これがもう、あまりに美味すぎて、皿までなめる、それで、この名がついたという料理だ
まぁ、一口に言えば鰯の味噌たたきだがなぁ
鯵と違って鰯のたたきは難しい、鯵なら只たたけばいいが、鰯はな、身が弱いので、そんなことをしたら
姿がなくなって、つみれになってしまう
それで、このな、なめろう独特のたたき方が生まれたのだ
左は強くととんのとん、右は弱くとととととん
ととんのとん、とととととん
これが出来るまではな、最低千匹の鰯をたたかねばならんなぁ
〔ドラマでのアレンジ〕
ドラマでは茂兵衛は登場せず、代わりをおまさと大滝の五郎蔵が務める。原作に出てくる大島勇五郎は気が弱く、剣術も弱い、木村忠吾から、おまさと相撲を取らせたら、「きっと、おまさが勝つ」と断定された程だが、ドラマでは与力・天野甚造から「どこか遠い空から降ってきたような」と言われるような人物として描かれている
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和五十六年十月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(二十一)』
TV 第ニシーズン45話『春の淡雪』(91年3月13日放送)
脚本:野上龍雄
監督:杉村六郎
〔本のおはなし〕
風も絶えた、春の夕空に雁がわたっている
そのとき・・・・・・
火付盗賊改方の長谷川平蔵へ、二人の浪人者が斬ってかかった
例によって、着ながしに塗笠をかぶった、市中見廻り姿の平蔵へ、
背丈の高い浪人が、息もつかせずに斬り捲(まく)ってきた
必殺の一刀を打ち込んできた浪人者の左側へ飛びぬけさま、近江守助直二尺四寸余の一刀、抜く手も見せずに浪人へ浴びせかけた
あわてて振り向いた無頼浪人の左耳が平蔵の一刀に切り飛ばされ、左肩からも血が迸(ほとばし)った
のめり込むように倒れかかる浪人へ見向きもせず、塗笠をかぶったままの平蔵が、血相を変えて迫る、もう一人の浪人の左側へ颯(さっ)と身を移し、
「酔いどれめ、おれが斬れるか」
と、いった
飛びちがって、双方がぱっと向き直った瞬間に、平蔵は相手の刀を無造作に打ちはらった
打ちはらわれた浪人の刀は手をはなれ、横ざまに飛んで落ちた
浪人は愕然となり、刀を拾って飯倉の通りへ一散に逃げた
平蔵に耳を切り落とされた浪人も、這うようにして、石段下北側の木立の中へ逃げ込もうとしている
夕暮れのことで、八幡宮の門前にいた人びとは十名に足らなかったが、期せずして、よろこびの声をあげた
二人の無頼浪人は、門前の茶屋へ入り、したたか酒をのんでおいて、
「この酒は、水で薄めてある。けしからん」
難癖をつけ、茶屋の老爺を撲りつけたり、蹴倒したりした
そこへ、西の久保八幡宮の参詣を終えた長谷川平蔵が通りかかり、浪人どもを懲らしめたのだ
刀身をぬぐって鞘へおさめた平蔵が件の茶屋へ入り、老爺をいたわり、
「酒をたのむ」
塗笠をとって腰掛けへかけた平蔵へ、
「長谷川様。とっくりと、拝見させていただきましてございます」
声をかけ、茶店へ入って来たのは、この近くの扇屋・平野屋源助方の番頭で、名を茂兵衛といい、年齢(とし)のころは四十をこえていよう
「実は長谷川様。これから御役宅へ参じるつもりでおりました」
平蔵の側へ身を寄せた茂兵衛が、
「悪い男(の)をひとり、見つけましてございます」
茂兵衛が耳もとでささやくにつれ、長谷川平蔵の顔色が引きしまってきた
夕闇が濃い
八幡宮参詣の、人の足も絶えた
何処かで、猫が鳴いている
茂兵衛は昼前に、商用で増上寺の子院・威徳院へおもむき、用事をすませてから、愛宕山権現社へ参詣しようとおもい、増上寺の裏門から外へ出ようとして、
(あっ・・・・・・)
素早く、裏門の陰へ身を引いた
愛宕下の方からやって来る、四十前後の二人連れの男に、見おぼえがあった
二人とも、茂兵衛が顔を見知っている盗賊で、
「ひとりは雪崩(なだれ)の清松、もうひとりは、日野の銀太郎と申しまして・・・・・・」
と、茂兵衛は長谷川平蔵に告げた
「二人とも、名前が長谷川様のお耳へ達しておりますでござりましょうか?」
「いいや、知らぬ」
さりげなくこたえておいたが、実は平蔵、雪崩の清松の名前と顔におぼえがあった
盗賊改方に、大島勇五郎という同心がいる
雪崩の清松は、大島同心が使っている密偵であった
同じ密偵でも、下ばたらきの清松は長谷川平蔵直属のそれではない
それから一刻ほど後に、長谷川平蔵は町駕籠で清水門外の役宅へ帰って来た
「明朝、五郎蔵とおまさを役宅へよんでもらいたい。それから、大島勇五郎に、わしの用事をたのむゆえ、外へ出るのを待つようにいいつけておくように」
平蔵は、当番与力の遠山猪三郎へいいつけておいて、早めに寝間へ入ったようだ
翌朝、ゆっくりと目ざめた長谷川平蔵が、待機していた同心の大島勇五郎を居間へよびよせたのは四ツ(午前十時)ごろであった
「大島。この手紙を、二本榎の細井彦右衛門殿へ届けてもらいたい。返事はいらぬ」
長官と細井彦右衛門との交誼については、大島もかねてからわきまえている
「では、これより行ってまいります」
「あ、待て」
立てかけた片膝を直し、やや、頚(くび)をかしげるようにして平蔵を見た大島勇五郎の顔や姿が、いかにも優しげである
「いま、おもいだしたが・・・・・」
と、長谷川平蔵が、亡父遺愛の銀煙管を手に取って、
「ほれ、お前が使っていた下ばたらきの、清松とか申した・・・・・・」
「このところ三月ほど、会うてはおりませぬ」
大島同心が出て行ったあと、平蔵は煙草のけむりを吐きつつ、開け放った障子の向こうの庭へ目をやった
薄曇りの空から、時折、日ざしが洩れてきて、朝から春のさかりがきたように生暖い
大島勇五郎は、下ばたらきの密偵・雪崩の清松と、三ヶ月も会っていないそうな
となれば、むろんのことに昨日も会ってはいないわけだ
平野屋の番頭・茂兵衛によると、昨日の清松は、盗賊・日野の銀太郎と共に、千束池のほとりの茅ぶきの小さな家へ入って行ったという。そのことを大島同心は知っていないことになる
知っていれば平蔵へ告げるであろう。いや、告げなくてはならぬ
ところで・・・・・・
長谷川平蔵は、今朝起きぬけに、暗いうちから役宅へ来て、妻の久栄の部屋に待機していた密偵・大滝の五郎蔵とおまさを密かにまねき、昨夜に茂兵衛から聞き取ったことをすべて打ちあけ、
「五郎蔵は、その千束池の様子を探ってもらいたい。おまさは、大島勇五郎の後を尾けてもらおう。今日、わしは大島を細井屋敷に使いに出すゆえ、そのつもりで」
「顔を見知っている間柄ゆえ、尾行はむずかしいが、大丈夫かえ?」
「大丈夫でございます」
きっぱりと、おまさはこたえた
「五郎蔵。さしたることはないとおもうが、平野屋源助が日野の銀太郎を、畜生ばたらきの好きそうな男と見きわめたのが気にかかる」
「まったくで・・・・・・」
と、五郎蔵の顔が引きしまった
同心・大島勇五郎が役宅を出てから半刻ほどして、平蔵も例の密行姿で、単身、役宅を出た
そのころ・・・・・
大島勇五郎は、数寄屋橋御門外の濠端を歩んでいた
いつもの大島に似ず、歩みぶりが鈍い
先刻、長官の前に出たときの大島とは別人のように、むずかしい顔つきになっていた
大島の左手が、笠の内へ入っている
左手の親指の爪を、いらいらしながら噛んでいるのだ
大島勇五郎を尾行しているはずの、おまさの姿は何処にも見えなかった。。。
〔主な登場人物〕
長谷川平蔵(中村吉右衛門)
大島勇五郎(中村浩太郎)
池田屋五平(中村又五郎)
雪崩の清松(平泉成)
おまさ(梶芽衣子)
大滝の五郎蔵(綿引勝彦)
平瀬の又吉(森下哲夫)
日野の銀太郎(椎谷建治)
〔盗賊〕
・平瀬の音吉:池田屋の番頭。一人ばたらきの盗賊で、引き込みを得意とする
・鷹ノ巣の新十郎:血なまぐさい急ぎばたらきをする兇盗。雪崩の清松と日野の銀太郎が池田屋の押し込み計画を売り込んだ
〔商家〕
・加賀屋:神谷町の蕎麦屋。平蔵が二階の小座敷に茂兵衛を連れて行き、雪崩の清松の話を聞く
・池田屋:神楽坂の毘沙門横町にある薬種屋。主・池田屋五平の盗人宿
・江戸清:市ヶ谷田町の料理屋。店構えも大きく、料理もうまい。大島勇五郎と雪崩の清松が池田屋五平一味と、五平のむすめ・おうめの身代金の交渉を行った
・小西屋彦太郎方:麹町三丁目の薬問屋。池田屋五平が十年ぶりの江戸の盗めを画策していた
〔料理帳・本〕
酒の肴は、芹の新漬に、蛤と葱の饅(ぬた)であった
ちょっと芥子のきいた味噌の味かげんもよい蛤の饅を口へ運んだ長谷川平蔵が、
「春だのう」
江戸清を正面から見ることができる茶店では、網代笠をかぶったまま、僧形の松永同心が団子をのんびり食べている
振鈴の音をきいて、久栄が次の間からあらわれた
「今日は冷ゆるな」
と、平蔵が久栄へ、
「女房どの。いわずとも、わかっていよう」
「ただいま、仕度を申しつけましてございます」
「酒の後に、鶏の出汁(つゆ)で、熱く煮込んだ饂飩がほしい」
「まあ・・・・・・」
「どうじゃ、これは、おもいつかなんだであろう」
〔料理帳・ドラマ〕
饂飩、平蔵他、見張り所にて
なめろう、猫殿の準備中、役宅にて
見よ、この肌つやといい、身の締まり、見事なこと、これならできる
たかが鰯とはなんだ、たかがとは、この猫様がなめろうを作ろうというのだぞ
いいか、そもそもなめろうとはな、牛込にある小坂という小料理屋の親爺の直伝の料理で、これがもう、あまりに美味すぎて、皿までなめる、それで、この名がついたという料理だ
まぁ、一口に言えば鰯の味噌たたきだがなぁ
鯵と違って鰯のたたきは難しい、鯵なら只たたけばいいが、鰯はな、身が弱いので、そんなことをしたら
姿がなくなって、つみれになってしまう
それで、このな、なめろう独特のたたき方が生まれたのだ
左は強くととんのとん、右は弱くとととととん
ととんのとん、とととととん
これが出来るまではな、最低千匹の鰯をたたかねばならんなぁ
〔ドラマでのアレンジ〕
ドラマでは茂兵衛は登場せず、代わりをおまさと大滝の五郎蔵が務める。原作に出てくる大島勇五郎は気が弱く、剣術も弱い、木村忠吾から、おまさと相撲を取らせたら、「きっと、おまさが勝つ」と断定された程だが、ドラマでは与力・天野甚造から「どこか遠い空から降ってきたような」と言われるような人物として描かれている
2011-07-03 12:34
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料理を作る描写で、ドラマでの猫殿の台詞回しは軽妙で、しかもホントに美味しそうに聞こえるのがいいですよね。
by トライブレード (2011-07-03 14:31)
なめろうってそういう由来だったんですか、初めて知りました。[__晴れ]
でも食べたことまだありません。[__ふらふら]
by neopon (2011-07-03 17:37)
ひねさ~~~ん!
またこちらで鬼平の再放送が始まりましたよ[__わーい][__揺れるハート]
バッチリ予約しています。家族全員楽しみにしてまっす。
ちなみに今日のお話は「血闘」です。
ふむー。
先日、その鬼平で猫殿がうさぎとお蕎麦について議論していたのですが、蕎麦って噛まずに飲み込むのが本当の食べ方なのでしょうか?
気管に詰まりそうで恐いです[__がく~]
我が家もトリで出汁をとったつけ麺のおつゆを作りますが、かけ用の出汁に使うのも美味しそうですね[__ぴかぴか]
by くわっぱ (2011-07-04 10:50)
又五郎さんがいい味出してましたねー。
画面がぴりっと引き締まる感じ。
by ひよ (2011-07-04 17:33)
[晴れ]トライブレードさん
nice!とコメントありがとうございます[ニコニコ][チョキ]
猫殿はドラマ・オリジナルキャラですが、沼田爆さん、いい味だしとりますなあ
by ひね (2011-07-05 22:29)
[晴れ]neoponさん
nice!とコメントありがとうございます[ニコニコ][チョキ]
アタシもなめろうは、まだ食べたことがありません
機会があれば食べてみたいもんです
by ひね (2011-07-05 22:31)
[晴れ]くわっぱさん
nice!とコメントありがとうございます[ニコニコ][チョキ]
ほほう、福岡ではまた再放送がはじまりましたか
キー局的にはTNCだよね、前は高宮にあったなぁ
蕎麦は濃い出汁にちょこっとつけて噛まずにのどごしを味合うのが粋な江戸っこの喰い方とよくいいますけどね~
みえはってるらしいすよ(笑)
by ひね (2011-07-05 22:41)
[晴れ]ひよさん
nice!とコメントありがとうございます[ニコニコ][チョキ]
山椒は小粒でぴりりと辛いといったところでしょうか
芸が存在感をますんでしょうなぁ
by ひね (2011-07-05 22:43)
[晴れ]yukaさん
[晴れ]クロさん
[晴れ]ひよこさぶれさん
[晴れ]Markさん
[晴れ]Machayoさん
[晴れ]ヒデさん
[晴れ]ヒサさん
[晴れ]みー☆さん
[晴れ]チッチッケさん
[晴れ]ごろべさん
[晴れ]xml_xslさん
[晴れ]OakCapeさん
[晴れ]ペコライムさん
nice!ありがとうございます[ニコニコ]
by ひね (2011-07-05 22:45)
[晴れ]ニゲラさん
[晴れ]マチャさん
[晴れ]メゾピアノさん
[晴れ]vegaさん
[晴れ]ぼんぼちぼちぼちさん
nice!ありがとうございます[ニコニコ]
by ひね (2011-07-11 20:55)
[晴れ]jiru3333さん
nice!ありがとうございます[ニコニコ]
by ひね (2011-07-13 00:03)
[晴れ]ついばみクロ介さん
[晴れ]BCリッチ・イーグルさん
nice!ありがとうございます[ニコニコ]
by ひね (2011-07-15 02:06)
[晴れ]ばんばらばんさん
nice!ありがとうございます[ニコニコ]
by ひね (2011-07-19 21:33)
[晴れ]りなみさん
nice!ありがとうございます[ニコニコ]
by ひね (2011-08-27 14:29)