凶剣 [鬼平]
''凶剣〔きょうけん〕''
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十四年七月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(三)』
TV 第一シーズン12話『凶剣』(89年10月11日放送)
脚本:中村努
監督:小野田嘉幹
''〔本のおはなし〕''
長谷川平蔵は同心・木村忠吾ひとりのみを伴い、二十年ぶりに京都へ、父・長谷川宣雄の墓参に訪れていた
平蔵の活躍により、虫栗の権十郎一味と女賊お豊が、京都西町奉行所の手で捕らえられてより十日目である
この間に・・・・・・
江戸できこえた前盗賊改方・長谷川平蔵の名は、いやでも京洛に評判された
「こうなっては、もう江戸へ引きあげるよりほかに・・・・・・」
道はあるまいと平蔵、しきりに帰府を急いだのだが、西町奉行の三浦伊勢守も与力・浦部彦太郎も、せっかくにおもいたったことゆえ、
「ぜひにも奈良見物を・・・・・・」
すすめてやまぬ
それにまた浦部与力が平蔵の供を熱望してやまないのだ
ところが浦部は、担当与力として虫栗一味の採決が下るまでは京をはなれられない
「では、まあ・・・・・・ゆるりとするか」
平蔵も、苦笑しつつあきらめ、浦部の手があくのを待つことにした
平蔵は忠吾をつれての、愛宕山・参詣をおもいたった
二人が、嵯峨・釈迦堂(清涼寺)に向けて、野の道を歩みだしたときであった
濃い夕闇の彼方から、ころげるように駆けて来た若い女が、いきなり、
「おねがいでござります。お助けを・・・・・・」
平蔵へ、すがりついたものである
この女を追って来た者がいた
道中合羽を着込んだ旅姿の三十男なのだが、なんと脇差を引きぬいていたが、
いかに男が飛びかかって来ても平蔵には勝てぬし、また勝てぬということを、男はわきまえていたようである
彼は、だまって身を退いた
うしろさがりに道を下って、十間もはなれたかとおもったとき、ふいと夕闇の中へ消えた
(只者ではないな)
と、平蔵は直感した
「家はどこだ、送ってやろう」
平蔵が、こう声をかけたとき、泥とほこりまみれの素足にわらじをはいている若い女が、むせび泣きをはじめた
悲しさよりも、恐怖と絶望にさいなまれているかのような泣声であった
それでも女は、
「およね」
と、名前だけは平蔵に告げている
年齢(とし)は二十(はたち)をすぎて見える
小さな痩せた躰つきで、変哲もない顔だちながら、おどおどとさびしげなにおいがただよっているのは生いたちの故か・・・・・・
およねは、父の顔を知らぬ
母の顔はといえば、
「私が、五つか六つのころまでは、年に一度ほど、大和へ帰って来ましたなれど・・・・・・それからは・・・・・・」
ふっつりと、行方も知れずになったという
それからのおよねは、おなじ大泉の村の瓦焼場ではたらいていた祖父・伊助と祖母のおはやに育てられた
おぼろげながら、わかったのは、なんでもおよねの母は、むすめのころに、大泉の大庄屋で酒造業もいとなんでいる渡辺家へ下女奉公に出たらしく、そのうち、下男・某と情をかわすようになり、ついに二人は渡辺家から駆け落ちをしてしまった
大泉を逃げてからの、およねの母は、のちに男からも捨てられ、大阪、その周辺(まわり)を転々としながら身をもちくずしていったらしい
同じ村の者たちが、なにかにつけて、およねの母のことを、およねの耳へふきこもうとする
で・・・・・・
祖母のおはやは、よく渡辺家へやって来る大阪の呉服屋で、大和屋栄次郎というものにたのみ、孫の奉公先をさがしてもらうことにした
そこで、大和屋がおよねを世話した先が、旅宿〔出雲屋丹兵衛〕方である
およねが奉公にあがった大阪の出雲屋の主人・丹兵衛は、実は香具師の元締・高津の玄丹であった
或夜、およねは主人一味が、こともあろうにお上のお役人を殺害する現場を目撃してしまう
玄丹の悪業を知って逃げてきたおよねも連れ、平蔵は忠吾、浦部与力と奈良へ
その一行の命を、玄丹に雇われた浪人集団がつけ狙っていた
大和平野をさしわたしにして、大泉までは約五里ほどであろうか
雨が落ちはじめた
蜜雲がたれこめ、あたりいちめん、うす墨を掃いたようになった
同じ頃おいに・・・・・・
長谷川平蔵と浦部彦太郎は、柳本の町の半里手前まで来ていた
そこから、目ざす大泉までは約半里の行程であった
雨の街道には人の気配もなかったのだが・・・・・・
強くなる雨にかまわず、街道を進みに進む平蔵と浦部の前方から、人影の黒いかたまりが突風のように押し出して来た
「や・・・・・・?」
笠をはねのけざまに平蔵が
「浦部、ゆだんするな!!」
叫んで振り向くと、うしろからも浪人体の一団が、これは早くも白刃をひらめかせて殺到して来るではないか・・・・・・
''〔主な登場人物〕''
長谷川平蔵(中村吉右衛門)
浦辺彦太郎(井川比佐志)
高津の玄丹(藤岡琢也)
岸井左馬之助(江守徹)
木村忠吾(尾美としのり)
久栄(多岐川裕美)
およね(長谷川真弓)
大河内一平(大前均)
白狐の谷松(松崎真)
猫鳥の伝五郎(粟津號)
''〔盗賊〕''
・猫鳥の伝五郎:高津の玄丹の手下。牛滝の紋次に玄丹への〔そえ状〕を書いてやる。
・牛滝の紋次:虫栗一味の生き残り。四百両の金で腕のたつ剣客を雇い、平蔵を暗殺して、兄と親分のかたきを討とうと考えている。伝五郎に玄丹の紹介状(そえじょう)をもらい、白子の菊衛門を訪ねる。
・虫栗の権十郎:上方を荒らす盗賊の頭目。平蔵に捕縛される。
・氷室の庄七:津国屋に帰る平蔵を襲撃した虫栗一味のひとり。盗人宿の在処を白状させられる。
・闇鴨の吉兵衛:虫栗一味。牛滝の紋次の実兄。いつも浪人風の変装をし、人殺しが得意。津国屋に帰る平蔵を襲撃し、斬ってすてられる。
・〔高津の玄丹〕:大阪の高津・五右衛門町に住む香具師の元締。もと雲州・松江の浪人あがり。白子の菊衛門と共に、大阪の暗黒街を牛耳る二大勢力。
・白子の菊衛門:大阪の新町橋・東詰に住む香具師の元締。
・男鬼の駒右衛門:虫栗一味。
・白狐の谷松:高津の玄丹の手下。その名のようにひょろりと細長い躰つきの、俗にいう白なまずにかかったらしい白斑の顔つきで、坊主あたま。
・鯨の源吉:大男。玄丹一味の中でも、相当の機密に通じており、平蔵じきじきの取調べで白状する。
''〔商家〕''
・〔津国屋〕:平蔵と忠吾が泊まっている白川橋の旅籠。
・〔平野や〕:愛宕社・一の鳥居ぎわにある、わら屋根の、いかにも風雅な茶店。愛宕詣での人びとが、ここへ来てひと休みし、いよいよ山道をのぼろうというわけで、平蔵も往きには足をやすめている。
・〔いけ亀〕:五条橋を西へわたり、高瀬川に沿った料理屋。猫鳥の伝五郎と牛滝の紋次が出会った後に二階の奥座敷にあがりこみ話をした。
・出雲屋・丹兵衛:道頓堀川の東、下大和橋の南のたもとにある〔讃岐・金毘羅出船所・諸国御宿〕の看板をかかげた宿屋。かまえも大きく、使用人も多く料理がうまいとかで、繁昌をきわめている。およねの奉公先。主人の丹兵衛は実は高津の玄丹。
・〔白子屋〕:白子の菊右衛門が女房のおだいに経営させている料理屋。婚礼や法事の仕出しもしていて、なかなか立派な店がまえをしている。
・大和屋栄次郎:堺すじ・唐物町の小さな呉服屋。主人の栄次郎は高津の玄丹一味。およねが出雲屋で奉公をするように口をきく。
・槌屋助八方:針屋。およねが白狐の谷松につれこまれた石蔵は、出雲屋から西へ、道路ひとつへだてて、この〔針屋〕に通じていた
''〔料理帳・本〕''
''〔料理帳・ドラマ〕''
懐石料理
(向付:若狭のぐじの細造り、煮物椀:鱧焼き・白瓜・早松茸、焼き物:吉野の鮎の塩焼き)
忠吾と浦部彦太郎、京の料亭にて
浦部「ここの料理は実に美味いですぞ。京料理は、そもそも四季折々の色を楽しみまして、そうそう美しい器で食べるともいいますなぁ」
握り飯、平蔵一行、旅の途中にて
忠吾がつくる茶粥、平蔵一行、常念寺にて
平蔵「茶粥は大和の名物だなあ」
忠吾「空豆とか薩摩芋とかも入れるんだそうで、冷や飯にかけても美味いと、ここの小坊主が教えてくれました」
小鮎の甘露煮、茸など、平蔵一行、大泉の渡辺屋敷にて
平蔵「忠吾、小鮎はこ・・・・・・、おいっ、よだれがでておるぞ」
忠吾「わたしは、好物と申しましても・・・・・・」
浦部「ぷぷっ」
''〔ドラマでのアレンジ〕''
鬼平シリーズ初の90分スペシャル番組
ドラマでは追い詰められた高津の玄丹が自決するが、原作では食を断って牢内で死ぬ
なお、虫栗の権十郎一味の捕縛の件は、『艶婦の毒』に詳しい
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十四年七月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(三)』
TV 第一シーズン12話『凶剣』(89年10月11日放送)
脚本:中村努
監督:小野田嘉幹
''〔本のおはなし〕''
長谷川平蔵は同心・木村忠吾ひとりのみを伴い、二十年ぶりに京都へ、父・長谷川宣雄の墓参に訪れていた
平蔵の活躍により、虫栗の権十郎一味と女賊お豊が、京都西町奉行所の手で捕らえられてより十日目である
この間に・・・・・・
江戸できこえた前盗賊改方・長谷川平蔵の名は、いやでも京洛に評判された
「こうなっては、もう江戸へ引きあげるよりほかに・・・・・・」
道はあるまいと平蔵、しきりに帰府を急いだのだが、西町奉行の三浦伊勢守も与力・浦部彦太郎も、せっかくにおもいたったことゆえ、
「ぜひにも奈良見物を・・・・・・」
すすめてやまぬ
それにまた浦部与力が平蔵の供を熱望してやまないのだ
ところが浦部は、担当与力として虫栗一味の採決が下るまでは京をはなれられない
「では、まあ・・・・・・ゆるりとするか」
平蔵も、苦笑しつつあきらめ、浦部の手があくのを待つことにした
平蔵は忠吾をつれての、愛宕山・参詣をおもいたった
二人が、嵯峨・釈迦堂(清涼寺)に向けて、野の道を歩みだしたときであった
濃い夕闇の彼方から、ころげるように駆けて来た若い女が、いきなり、
「おねがいでござります。お助けを・・・・・・」
平蔵へ、すがりついたものである
この女を追って来た者がいた
道中合羽を着込んだ旅姿の三十男なのだが、なんと脇差を引きぬいていたが、
いかに男が飛びかかって来ても平蔵には勝てぬし、また勝てぬということを、男はわきまえていたようである
彼は、だまって身を退いた
うしろさがりに道を下って、十間もはなれたかとおもったとき、ふいと夕闇の中へ消えた
(只者ではないな)
と、平蔵は直感した
「家はどこだ、送ってやろう」
平蔵が、こう声をかけたとき、泥とほこりまみれの素足にわらじをはいている若い女が、むせび泣きをはじめた
悲しさよりも、恐怖と絶望にさいなまれているかのような泣声であった
それでも女は、
「およね」
と、名前だけは平蔵に告げている
年齢(とし)は二十(はたち)をすぎて見える
小さな痩せた躰つきで、変哲もない顔だちながら、おどおどとさびしげなにおいがただよっているのは生いたちの故か・・・・・・
およねは、父の顔を知らぬ
母の顔はといえば、
「私が、五つか六つのころまでは、年に一度ほど、大和へ帰って来ましたなれど・・・・・・それからは・・・・・・」
ふっつりと、行方も知れずになったという
それからのおよねは、おなじ大泉の村の瓦焼場ではたらいていた祖父・伊助と祖母のおはやに育てられた
おぼろげながら、わかったのは、なんでもおよねの母は、むすめのころに、大泉の大庄屋で酒造業もいとなんでいる渡辺家へ下女奉公に出たらしく、そのうち、下男・某と情をかわすようになり、ついに二人は渡辺家から駆け落ちをしてしまった
大泉を逃げてからの、およねの母は、のちに男からも捨てられ、大阪、その周辺(まわり)を転々としながら身をもちくずしていったらしい
同じ村の者たちが、なにかにつけて、およねの母のことを、およねの耳へふきこもうとする
で・・・・・・
祖母のおはやは、よく渡辺家へやって来る大阪の呉服屋で、大和屋栄次郎というものにたのみ、孫の奉公先をさがしてもらうことにした
そこで、大和屋がおよねを世話した先が、旅宿〔出雲屋丹兵衛〕方である
およねが奉公にあがった大阪の出雲屋の主人・丹兵衛は、実は香具師の元締・高津の玄丹であった
或夜、およねは主人一味が、こともあろうにお上のお役人を殺害する現場を目撃してしまう
玄丹の悪業を知って逃げてきたおよねも連れ、平蔵は忠吾、浦部与力と奈良へ
その一行の命を、玄丹に雇われた浪人集団がつけ狙っていた
大和平野をさしわたしにして、大泉までは約五里ほどであろうか
雨が落ちはじめた
蜜雲がたれこめ、あたりいちめん、うす墨を掃いたようになった
同じ頃おいに・・・・・・
長谷川平蔵と浦部彦太郎は、柳本の町の半里手前まで来ていた
そこから、目ざす大泉までは約半里の行程であった
雨の街道には人の気配もなかったのだが・・・・・・
強くなる雨にかまわず、街道を進みに進む平蔵と浦部の前方から、人影の黒いかたまりが突風のように押し出して来た
「や・・・・・・?」
笠をはねのけざまに平蔵が
「浦部、ゆだんするな!!」
叫んで振り向くと、うしろからも浪人体の一団が、これは早くも白刃をひらめかせて殺到して来るではないか・・・・・・
''〔主な登場人物〕''
長谷川平蔵(中村吉右衛門)
浦辺彦太郎(井川比佐志)
高津の玄丹(藤岡琢也)
岸井左馬之助(江守徹)
木村忠吾(尾美としのり)
久栄(多岐川裕美)
およね(長谷川真弓)
大河内一平(大前均)
白狐の谷松(松崎真)
猫鳥の伝五郎(粟津號)
''〔盗賊〕''
・猫鳥の伝五郎:高津の玄丹の手下。牛滝の紋次に玄丹への〔そえ状〕を書いてやる。
・牛滝の紋次:虫栗一味の生き残り。四百両の金で腕のたつ剣客を雇い、平蔵を暗殺して、兄と親分のかたきを討とうと考えている。伝五郎に玄丹の紹介状(そえじょう)をもらい、白子の菊衛門を訪ねる。
・虫栗の権十郎:上方を荒らす盗賊の頭目。平蔵に捕縛される。
・氷室の庄七:津国屋に帰る平蔵を襲撃した虫栗一味のひとり。盗人宿の在処を白状させられる。
・闇鴨の吉兵衛:虫栗一味。牛滝の紋次の実兄。いつも浪人風の変装をし、人殺しが得意。津国屋に帰る平蔵を襲撃し、斬ってすてられる。
・〔高津の玄丹〕:大阪の高津・五右衛門町に住む香具師の元締。もと雲州・松江の浪人あがり。白子の菊衛門と共に、大阪の暗黒街を牛耳る二大勢力。
・白子の菊衛門:大阪の新町橋・東詰に住む香具師の元締。
・男鬼の駒右衛門:虫栗一味。
・白狐の谷松:高津の玄丹の手下。その名のようにひょろりと細長い躰つきの、俗にいう白なまずにかかったらしい白斑の顔つきで、坊主あたま。
・鯨の源吉:大男。玄丹一味の中でも、相当の機密に通じており、平蔵じきじきの取調べで白状する。
''〔商家〕''
・〔津国屋〕:平蔵と忠吾が泊まっている白川橋の旅籠。
・〔平野や〕:愛宕社・一の鳥居ぎわにある、わら屋根の、いかにも風雅な茶店。愛宕詣での人びとが、ここへ来てひと休みし、いよいよ山道をのぼろうというわけで、平蔵も往きには足をやすめている。
・〔いけ亀〕:五条橋を西へわたり、高瀬川に沿った料理屋。猫鳥の伝五郎と牛滝の紋次が出会った後に二階の奥座敷にあがりこみ話をした。
・出雲屋・丹兵衛:道頓堀川の東、下大和橋の南のたもとにある〔讃岐・金毘羅出船所・諸国御宿〕の看板をかかげた宿屋。かまえも大きく、使用人も多く料理がうまいとかで、繁昌をきわめている。およねの奉公先。主人の丹兵衛は実は高津の玄丹。
・〔白子屋〕:白子の菊右衛門が女房のおだいに経営させている料理屋。婚礼や法事の仕出しもしていて、なかなか立派な店がまえをしている。
・大和屋栄次郎:堺すじ・唐物町の小さな呉服屋。主人の栄次郎は高津の玄丹一味。およねが出雲屋で奉公をするように口をきく。
・槌屋助八方:針屋。およねが白狐の谷松につれこまれた石蔵は、出雲屋から西へ、道路ひとつへだてて、この〔針屋〕に通じていた
''〔料理帳・本〕''
生簀からひきあげたばかりの鯉を洗いにした、その鯉のうす紅色の、ひきしまったそぎ身が平蔵の歯へ冷たくしみわたった。
「むむ・・・・・・」
あまりのうまさに長谷川平蔵は、おもわず舌つづみをうち、
「これは、よい」
すると、おなじ緋毛氈を敷いた腰かけにいる木村忠吾が、
「まるで、極楽でございますなぁ」
などと、妙に年よりじみたことをいうのが平蔵にはおかしかった。
夏になると、保津川や清滝川でとれる鮎をこの平野やまではこび、荷の中の鮎へ水をかえてやり、一息入れてから京へはこぶのだ。
平蔵と忠吾が、ここまで下って来たときには、まだ昼前であったけれども、
「腹をこしらえてゆこうか」
ずいと入るや、
「おつかれさんでございります」
赤前かけの女たちが、すぐさま、谷川へ面した腰かけへ案内してくれた。
すうっと汗がひくほど、山肌の若菜にうもれつくしたかのような茶屋なのである。
盃をもつ手ゆびまでがみどりに染まってしまいそうであった。
こころゆくまで嵐気にひたりつつ、おもうさま酒をのみ、鯉を食べ、さらにとうふの田楽、鯉の飴だきとつづく。
木村忠吾ならずとも、まさに極楽の気分。
''〔料理帳・ドラマ〕''
懐石料理
(向付:若狭のぐじの細造り、煮物椀:鱧焼き・白瓜・早松茸、焼き物:吉野の鮎の塩焼き)
忠吾と浦部彦太郎、京の料亭にて
浦部「ここの料理は実に美味いですぞ。京料理は、そもそも四季折々の色を楽しみまして、そうそう美しい器で食べるともいいますなぁ」
握り飯、平蔵一行、旅の途中にて
忠吾がつくる茶粥、平蔵一行、常念寺にて
平蔵「茶粥は大和の名物だなあ」
忠吾「空豆とか薩摩芋とかも入れるんだそうで、冷や飯にかけても美味いと、ここの小坊主が教えてくれました」
小鮎の甘露煮、茸など、平蔵一行、大泉の渡辺屋敷にて
平蔵「忠吾、小鮎はこ・・・・・・、おいっ、よだれがでておるぞ」
忠吾「わたしは、好物と申しましても・・・・・・」
浦部「ぷぷっ」
''〔ドラマでのアレンジ〕''
鬼平シリーズ初の90分スペシャル番組
ドラマでは追い詰められた高津の玄丹が自決するが、原作では食を断って牢内で死ぬ
なお、虫栗の権十郎一味の捕縛の件は、『艶婦の毒』に詳しい
2009-06-07 13:52
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コメント(47)
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狂犬・・マッドドック・バッションが直ぐに思い浮かぶ。
この小野田監督っていうのは名前聞いた事あるんですが、東映とか松竹の映画出身の監督だったのでしょうか?。
by ブラックアビブ (旧名 本物ホネツギマン) (2009-06-07 14:01)
TVではスペシャルだったのですね。
ひねさんの記事もいつもより1.5倍長く感じました(笑)
by ヒサ (2009-06-07 14:12)
いつも感心するのですが…ほんとに完成度が高いです。[かわいい]
ちなみに、記事をUPするまでに、どのくらいの時間がかかっているのでしょうか?
by vega (2009-06-07 14:22)
ハ~イ!アニキhttp://playlog.jp/_images/blog/s/o/soundwish/m_200139571.gif
長谷川真弓たんのおまけがあるんじゃないかって色めき立ってしまったよ(爆)
by Soundwish (2009-06-07 14:24)
[晴れ]本物ホネツギマン(アビブ)さん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
狂犬、、、アタシはとんぱちディック・マードックが真っ先に思い浮かびました(笑)
ドリル・ア・ホール・パイルドライバーの使い手、キラー・バディ・オースチンも狂犬と呼ばれていましたねえ
小野田監督は松竹京都撮影所の作品を多く監督していますが、新東宝出身じゃないですかねえ、三ツ矢歌子さんの旦那さんです
光と影をうまく使った映像が秀逸で、必殺シリーズも何本か撮っていると思います
by ひね (2009-06-07 14:29)
[晴れ]ヒサさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
まあ、元が1.5倍ですからねえ
ちなみに定年になる東関親方(元高見山)が記念パーティへの参加者を500人くらいと見込んでいたのに1000人も集まったので、''「2ば~い、2ば~い」''と往年のCMよろしく喜んでいたらしいよ[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-07 14:42)
[晴れ]vegaさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
正確には測ったことがないのですが、原作を読み直して、DVDを見直してだからけっこう時間はかかってると思いますが、普通は1日のうちにはアップできてます[手(チョキ)][嬉しい顔]
今回は1.5倍なので、昨日からとりかかりましたけどね(笑)
by ひね (2009-06-07 14:47)
[晴れ]Soundwishさん
コメントありがとうございます[嬉しい顔]
やぁ、サンディ[手(パー)]
鬼平シリーズは、基本、おまけはないんだよ~
=====
色めき立ってしまったよ
=====
そんなサンディのためにサービス[かわいい]
http://playlog.jp/_images/blog/h/i/hine/200588397.jpg
by ひね (2009-06-07 14:52)
[晴れ]raichiさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-07 14:53)
茶粥が食べたくなりました[複数のハート]
それにしても、大前均さんも松崎真さんも悪そうな顔してますなぁ[嬉しい顔]
by ひもなしパンツ (2009-06-07 15:37)
京都が舞台になると、やはり、懐石料理が出てくるんですね。
と、言う私も、数年前、京都に行った際には、懐石料理を味わいました[嬉しい顔]
実は・・・金閣寺って行ったことないんです[悲しい顔]
こちらに住む、日本大好きフランス人に、行ったわ[嬉しい顔][ハート]凄かったワ
と写真を見せられました。
by emi(*paris.p.p) (2009-06-07 15:45)
毎度々々、ひねさんを恨みます[怒った顔]。
ホント、鬼平が見たくなりますよ[嬉しい顔]。
いや~、も~タマラン。
by トライブレード (2009-06-07 15:58)
(人´ω`) 短編小説を読んだような満足感[ハート]
素晴らしい記事です[嬉しい顔]
保津川の鮎、食べてみたいです[嬉しい顔]
(゜Д゜≡゜Д゜)?
オマケはっ[!?]
(`Д´≡`Д´)??
by chibiriku (2009-06-07 17:45)
[晴れ]ひもなしパンツさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
松崎 真さんは『笑点』の座布団運びで「手を上げて、横断歩道を渡りましょう」って、やってた頃と様変わりですねえ
by ひね (2009-06-07 17:49)
[晴れ]emi*parisさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
鹿苑寺舎利殿(金閣)は、突然目の前に現われるような地形(つくり)になってて、眼をみはりますねえ、瞬間芸って感じです
慈照寺観音殿(銀閣)のほうが趣があるというか深みがある気がします[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-07 18:00)
[晴れ]トライブレードさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
お褒め頂き恐縮です
早速、TSUTAYAにGOですな[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-07 18:02)
[晴れ]りなみさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
=====
(゜Д゜≡゜Д゜)?
(`Д´≡`Д´)??
=====
[グッド]
これが面白いけど、おまけはありません(笑)
鬼平シリーズは、基本、ないんですよ、おまけ
by ひね (2009-06-07 18:07)
あの座布団運びの愛想の良い松崎真さんですか~[ふらふら]
別人のようだ・・・[悲しい顔]
藤木悠さんかと思ってしまいました[汗]
by ばんばらばん (2009-06-07 18:32)
[晴れ]ばんばらばんさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
藤木悠さんも善良そうな刑事役とかが多くて、悪役ってやったことがないか少ないんじゃないかな~
by ひね (2009-06-07 19:42)
[晴れ]オノマキコさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-07 19:42)
またまた続きが読みたくなる終わり方で(苦笑)
職場のレクで映画鑑賞の時間があるのですが
時々『鬼平』をやってまして…
ご老人に交じって、見ていたい時があります(笑)
by yuka (2009-06-07 20:54)
私も、長谷川真弓さんのオマケを一瞬期待してしまいました(笑)
by こーいち (2009-06-07 20:54)
=====
濃い夕闇の彼方から、ころげるように駆けて来た若い女が、いきなり、
=====
おまけへ高まる期待!o(^-^ )oワクワクo( ^-^)oワクワク
がしかし、おまけが無いじゃありませんか。
わたしのこの高まったボルテージはどこへ向かえばいいのやら。。。・゚・(ノД`)・゚・。
でも同じ仲間が結構いたことに救われました。サンディとか。(笑)
それはさておき、今回はみなさんおっしゃっているように力作ですね。これを1日で完成させるとはさすがです。[晴れ]
by neopon (2009-06-07 23:46)
なんだか京都って ご近所のお話でうれしいです^^
保津川下りもやった事あるんですよ
あの・・・左馬之助様 お写真はあるんですが 文中にはまだ登場されてないですねー[汗]
忠吾も浦辺さんも あんまり強そうじゃないから心配です
早く助っ人に・・・[飛び散る汗]
これも 読みたいリストに入れておきます キニナル[飛び散る汗]
ところで いかつい大前 均さんって元プロレスラーとか?笑
ブッチャーを連想してしまいました^^;
by ituki (2009-06-07 23:55)
あはは。ひねさんの記事に初めて携帯からアクセスしました。こりはパソコンからじゃないと…(T_T)
by やまびこ (2009-06-08 17:50)
[晴れ]yukaさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
では[手(パー)]職場のレクの映画鑑賞の時間に鬼平堪能してください(笑)
by ひね (2009-06-08 21:58)
[晴れ]こーいちさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
長谷川真弓さんのムフフな画像って、ないんですよね~残念ながら[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-08 22:00)
[晴れ]neoponさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
=====
サンディとか。(笑)
=====
neoponさんのおかげで、Soundwishさんの愛称サンディが定着しそうですね[手(チョキ)][嬉しい顔]
neoponさんは愛称は何がよいのかな
by ひね (2009-06-08 22:05)
[晴れ]itukiさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
保津川は嵐山からトロッコ列車に乗って、川下りをやろうと思いましたが、寒かったので、また、トロッコ列車で戻ってきました(笑)
何か狸の置物が沢山ある駅が途中にあったなぁ
大前 均さんはプロレスラーではありません
確かに、額の皺がブッチャーを彷彿とさせますね[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-08 22:23)
[晴れ]やまびこさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
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携帯からアクセスしました。こりはパソコンからじゃないと…(T_T)
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やまびこさんの記事も(笑)
by ひね (2009-06-08 22:27)
[晴れ]Machayoさん
[晴れ]よたろうさん
[晴れ]I L R&Bさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-08 22:33)
鯉料理はけっこう苦手でござる。。[嬉しい顔]笑
今の時期はけっこうハモがいいんですよね。。
by rhythm♭ (2009-06-09 01:28)
ひねさんのこのシリーズは、素晴らしいです[嬉しい顔]
作品への愛を感じます[嬉しい顔]
by decobo (2009-06-09 01:52)
[晴れ]rhythm♭さん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
鯉も鱧もお高くて、なかなか口にすることがありましぇん[汗]
by ひね (2009-06-09 05:02)
[晴れ]decoboさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
お褒め頂き恐縮です[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-09 05:04)
あはは。僕のも確かにそうです[ふらふら]
それにしても、すごい文章ですねぇ[OK]
キーボードを叩くスピードもかなり速いんでしょうか?[ひらめき]
by やまびこ (2009-06-11 18:36)
[晴れ]やまびこさん
う~ん、そんなに早くはないです
普通かなぁ
by ひね (2009-06-11 21:45)
[晴れ]しんちゃん♪
[晴れ]コウタさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-11 21:48)
[晴れ]蓮那さん
[晴れ]ニゲラさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-12 21:15)
[晴れ]bukubukuさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-13 23:27)
穏やかなお顔の鬼平さんは、染五郎さん
(松たか子さんのお兄さん・・・?)に
似ていらっしゃいますね~(^^)
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いかに男が飛びかかって来ても平蔵には勝てぬし、また勝てぬということを、男はわきまえていたようである
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かっこいいです~~~(*^^*)
じりじりと退く・・・無言の対決シーンが
浮かびます。
五重塔は、どちらのお寺でしょう。。
by ぽわぽわ (2009-06-14 00:40)
[晴れ]ぽわぽわさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
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松たか子さんのお兄さん・・・?
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お兄さんであってますよ[手(パー)]
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かっこいいです~~~(*^^*)
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池波先生の筆力ですなあ
五重塔は仁和寺じゃないかと思います[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-14 03:00)
[晴れ]Dragonflyさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-14 03:01)
何だかじわじわとサンディの愛称が定着して来てますね。(笑)
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neoponさんは愛称は何がよいのかな
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そうですねえ、ホーエンツォレルン・フリードリッヒ・ネオポルトXXIII世とかはどうでしょう?(笑)
by neopon (2009-06-14 15:11)
[晴れ]neoponさん
サンディからはブラザ~と呼ばれてますね[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2009-06-14 17:16)
[晴れ]N@Oさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2009-06-17 23:17)
沒有醫生的處方
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by Generic for cialis (2018-04-14 09:45)