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血闘 [鬼平]

鬼平犯科帳のマドンナと言えば、〔女密偵のおまさ〕で、異論のないところでしょう

本作は〔おまさ〕が初めて登場する作品です

ほぼ、どの作品にも登場しているといったイメージが強かったのですが、初登場が文庫の四巻からとは、けっこう遅かったのですね

ドラマも、梶芽衣子・おまさ登場は5話からです


血闘〔けっとう〕
初出掲載誌 『オール讀物』 昭和四十五年ニ月号
文春文庫 『鬼平犯科帳(四)』
TV 第一シーズン5話『血闘』(89年8月9日放送)
脚本:小川英
監督:田中徳三

〔本のおはなし〕
平蔵は、田圃に引きこんだ用水に浮かんだ小舟の中で、部下の遅すぎる到着に気を揉んでいた

武蔵の国・南葛飾郡・渋江村、いまでいえば、東京都葛飾区東四つ木、ということになる

前方の田圃の向こうに、表門は朽ちかけ、土塀もくずれた荒屋敷が見える

その屋敷の中に、女の密偵・おまさが囚われているのだ


おまさの父親は〔鶴(たづがね)の忠助〕と、異名をとった〔ながれ盗(づとめ)〕の盗賊で、

二十余年前に、本所・四つ目に〔盗人(ぬすっと)酒屋〕という居酒屋をいとなんでいた

若き日の平蔵(当時の名は銕三郎)は継母の波津とのおりあいが悪く、ほとんど屋敷へは寄り付かず、

〔三ッ目の銕つぁん〕とか〔入江町の鬼〕とか呼ばれ、土地(ところ)の無頼どもの〔顔役〕におさまっており、〔盗人酒屋〕もいきつけの店であった

鶴の忠助が長谷川屋敷に忍び入り、ねむりこけた波津の髪を完膚なきまでに切り落としてしまうという事件もあり、平蔵との親密の度を増したものであった

平蔵が長谷川家の跡とりになった頃、すでに〔盗人酒屋〕は四ッ目にはなかった

鶴の忠助は病死し、おまさは父親の故郷である下総のどこかへ去ったのだという

そのおまさが二十数年ぶりに役宅に名のり出て、「密偵(いぬ)になりたい」というのであった

彼女がもたらす情報によって、〔火盗改メ〕の活動も相当にたすけられた、といってよい


夕闇が、濃くなってきた

ぐずぐずしていたら、

(おまさのいのちが、あぶない)

のであった

平蔵は単身で、屋敷内へ乗りこんでみる決意をし、愛刀・粟田口国綱の鯉口をきった。。。


〔主な登場人物〕

長谷川平蔵(中村吉右衛門)


おまさ(梶芽衣子)


相模の彦十(江戸屋猫八):本では〔嶋や〕の船頭・由松
急を知らせるため役宅へ駆け向かう途中、あばれ馬に蹴倒され気を失ってしまう


久栄(多岐川裕美)
妻女の久栄が、そうしたおまさを見て、平蔵にいった。
「おまささんは、若いころのあなたさまのことが忘れられないのでございましょう」
「ばかな・・・・・・なにをいい出すのだ」
「いえ、まことでございますよ」
「なれど、あのころ、おまさはまだ十か、十一で・・・・・・おぬし、どうかしいるのではないか?」
「ならばこそ忘れられぬのでございます。それが、女というものでござります」


吉間の仁三郎(磯部勉)
三井伝七郎(岩尾正隆)


〔盗賊〕
法楽院の直右衛門:鶴の忠助が所属した盗賊の親分
乙畑の源八、熊倉の惣十:おまさが〔引き込み〕として働いた盗賊の親分


〔おまさ初登場シーン〕
・・・小肥りな少女だったおまさは、すっきりと〔年増痩せ〕していたのである。
おまさは三十をこえていた。
肌は、江戸の女の常で浅ぐろいが荒れてもいず、身なりもきっちりとしてい、黒くてぱっちりとした双眸とおちょぼ口がむかしのおもかげをやどしていた。
・・・以来、彼女は〔まき紙・おしろい・元結・せんこう〕と書いた紙をはりつけた箱を背負い、手に〔おはぐろ〕の壷を下げて、小間物の行商をしながら、江戸の町々をまわり歩き、いろいろな情報を平蔵にもたらすようになった。


〔掟〕
鶴の忠助はむかしかたぎの盗賊であって、
「ないところからは盗らず、ありあまるところから盗る。おつとめに人を殺傷せぬ。女を犯さぬ」
の、真の盗賊なら屹渡まもりぬかねばならぬ〔三ヵ条〕を、ついに一度もやぶったことのなかった男である。


〔料理帳・本〕
当時、十か十一の少女だったおまさは、父親の忠助と二人きりで暮してい、平蔵が酒をのみすぎた翌朝など、その小さな手で、器用に白粥に梅干、香の物をそえたものをこしらえ、平蔵のいる中二階へはこんで来てくれたものだ

その日の山田は、虚無僧姿になって巡回していたが、下谷・広徳寺門前の茶店へ立ち寄り、疲れやすめに甘酒をすすっていると、どこからあらわれたものか、小間物売りになりきったおまさがふわりと近寄ってきて、
「山田さま」
と、声をかけた。



〔料理帳・ドラマ〕

甘酒、茶店にて
平蔵と同心・酒井祐助(篠田三郎)


卵酒、〔盗人酒屋〕の二階にて
二日酔いの平蔵のために、おまさが卵酒をつくる(回想シーン)






生鰹節ほか、役宅にて、平蔵
「やはり、生鰹節は大根おろしにわさび醤油にかぎるな」


〔ドラマでのアレンジ〕
荒屋敷に踏み込んだ平蔵が、盗賊どもに、あの女の情夫(いろ)じゃないのかと問われ、「貴様ら外道の刀で、あの女の情夫が切れるか」と啖呵をきる
この一言を聞いていたおまさは感動に打ち震える
これは原作にはない

さらわれたおまさは居場所を教えるため針を落としていく、原作では長屋に書付を残している

原作では、おまさには七つになる女の子がいるらしいとなってるが、ドラマでは触れられていない






梶芽衣子さんのおまけはこちらの記事にて
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コメント 36

ひね

[晴れ]decoboさん
[晴れ]オノマキコ(ピンク)さん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-24 14:06) 

ヒサ

池波正太郎の表現は色気がありますね[嬉しい顔][複数のハート]

多岐川裕美が出ていたんですね~
高校の頃、「酸っぱい経験」(だったかな?)が好きでした~[嬉しい顔][複数のハート]
by ヒサ (2008-02-24 14:30) 

ブラックアビブ (旧名 本物ホネツギマン)

黙ってましたが・・おまさ登場しましたね。[嬉しい顔]彼女、時間ですよ!にも出演していましたが・・・これもそうなんですが、不思議と印象がありません。やはり、サソリと着流しの女賭博師のイメージですね。外人の名前は忘れましたが、爬虫類の顔した監督がぞっこんなのも理解できます。勿論唄の雰囲気もワン&オンリーです。[嬉しい顔]
by ブラックアビブ (旧名 本物ホネツギマン) (2008-02-24 14:31) 

ひね

[晴れ]ヒサさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
シャツのボタン二つはずしただけで~♪
ってやつですね 
by ひね (2008-02-24 16:52) 

ひね

[晴れ]本物ホネツギマン(アビブ)さん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
色の浅黒いという点を除くと、池波さんの描写するおまさ像にぴったりの女優さんではないでしょうか
by ひね (2008-02-24 17:00) 

ひね

[晴れ]模範囚さん
[晴れ]kotoriさん
[晴れ]river0306(レッド)さん
[晴れ]コウタさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-24 17:02) 

ひね

[晴れ]Soundwishさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-24 17:35) 

こーいち

梶芽衣子さんのおまけに吊られて、また きんばあさんで笑ってしまいました[嬉しい顔]
by こーいち (2008-02-24 18:57) 

ひね

[晴れ]こーいちさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
前記事への再訪問ありがとうございます
おまけにつられちゃったとは(笑)
by ひね (2008-02-24 20:48) 

ひね

[晴れ]yukaさん
[晴れ]くろすけさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-24 23:24) 

neopon

ひねさんの「鬼平」の記事のこだわりは、ぼくが「サンスト」の記事を書くのと同じようなものが感じられてほとんど他人とは思えません。兄さんと呼ばせてください。(笑
by neopon (2008-02-24 23:49) 

ひね

[晴れ]neoponさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
お互い、こだわり続けていきましょう[手(グー)]
最後の(笑が気になる
by ひね (2008-02-25 00:08) 

ひね

[晴れ]jiruさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-25 00:15) 

ひね

[晴れ]メガネマンさん
[晴れ]Devilさん
[晴れ]bukubukuさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-25 22:32) 

MEG

久栄さんの言葉、説得力がアリマスねー。
そんなもんデスよ、意外と(笑)
by MEG (2008-02-25 23:53) 

ひね

[晴れ]MEG(イエロー)さん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
そんなもんなんですか
勉強になります
by ひね (2008-02-26 02:27) 

CCO     

=====
やはり、生鰹節は大根おろしにわさび醤油にかぎるな
=====

このへんが、結構楽しみです(笑)。
by CCO      (2008-02-26 03:47) 

ひね

[晴れ]CCOさん
コメントありがとうございます[嬉しい顔]
料理帳部分にはじめてコメントいただきました
楽しみにしてください
by ひね (2008-02-26 04:01) 

退会済み

鰹に空豆、夏と言う季節を感じれますよね[嬉しい顔]
by 退会済み (2008-02-26 17:36) 

ひね

[晴れ]餞さん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
原作は二月号掲載なので鰹と空豆は登場しません
8月放送というテレビならではのメニューになっています[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-26 23:58) 

ひね

[晴れ]ニゲラさん
[晴れ]クロさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-27 00:01) 

ぽわぽわ

梶芽衣子さん、目が印象的です!
この作品に無くてはならない方ですね(^^)
by ぽわぽわ (2008-02-27 08:35) 

ひね

[晴れ]ぽわぽわさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
おまさ役で、梶さんも新境地を開いたような気もします
by ひね (2008-02-27 20:01) 

ひね

[晴れ]N@Oさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-27 20:02) 

蓮那

盗人酒屋って…[汗]バレバレ?
by 蓮那 (2008-02-27 20:24) 

ひね

[晴れ]蓮那(シルバー)さん
コメントありがとうございます[嬉しい顔]
まさか本当に盗人がやっている居酒屋とは客も思いますまい[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2008-02-27 20:29) 

よたろう

梶芽衣子さんに、多岐川裕美さん。。。
見事です。[温泉]
by よたろう (2008-02-27 20:59) 

ひね

[晴れ]よたろうさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
自分にとって、好みの女優陣がレギュラーってのもドラマ鬼平のいいところです[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2008-02-27 21:08) 

ひね

[晴れ]ひもなしパンツさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-02-28 06:09) 

ひね

[晴れ]★☆Captain☆★さん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-03-03 20:40) 

ひね

[晴れ]ぺーすめいかさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-03-03 23:07) 

ひね

[晴れ]キュッカさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-03-03 23:19) 

ひね

[晴れ]rhythm♭さん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-03-10 06:47) 

ひね

[晴れ]raichiさん
[ハート]まーく、ありがとうございます[嬉しい顔]
by ひね (2008-03-15 02:56) 

くわっぱ

うはー (鼻血ぶー)[!!]
この回はドラマで見てみたいです[ふらふら][複数のハート]
やはり一番気になるトコロで終わるので、続きが気になりますよ!
コレは原作を読んじゃえという策なのか(笑)


ふむ。
鶴の忠助が継母・波津の髪をバッサリ切ることで親密になったって、どんだけ親子の仲が悪かったんだろ[飛び散る汗]


最近の鬼平の再放送を見て、好きな時代劇ランキングが変動しました。
''鬼平が1位です[ぴかぴか]''
by くわっぱ (2010-03-10 22:16) 

ひね

[晴れ]くわっぱさん
[ハート]まーく、コメントありがとうございます[嬉しい顔]
続きは是非原作をご覧下さい(笑)
TVQの再放送はもう第6シーズンまでいっているようですね
鬼平が好きな時代劇ランキング1位になって、よかったです[手(チョキ)][嬉しい顔]
by ひね (2010-03-11 00:09) 

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